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中小企業経営者が知っておきたい『裁量労働制』について


起業後、事業の拡大とともに人を雇うかと思いますが、日本には『裁量労働制』という制度があります。労働者が働きやすい環境つくりの一環として作られた制度ですが、業務内容や会社規模によってによって導入できる会社、できない会社があります。

今回は、起業家が知っておきたい『裁量労働制』について解説していきます。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは「みなし労働時間制」のひとつで、「労働時間が労働者の裁量にゆだねられている労働契約」のことを指します。簡単にいえば「労働時間が長くても短くても、実際に働いた時間に関係なく『契約した労働時間分を働いた』ことにする」制度です。

基本的には時間外労働という概念がないため、労働者保護の観点から労働時間に関する取り決めがあったり、適用される職種が限られたりする点にも注意が必要です。そして裁量労働制を採用するには、使用者と労働者の間で事前に取り決めをしておくことが必要です。使用者が一方的に導入を決めることはできません。

対象業務が決められている?

現在、日本で認められている裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。「専門業務型裁量労働制」は専門性が高い業務で、「企画業務型裁量労働制」は企画・立案・調査・分析を行う業務で導入することができますが、それぞれの条件や定義については以下になります。

専門業務型裁量労働制

厚生労働省による専門業務型裁量労働制の定義では、「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度」とされています。
「専門業務型裁量労働制」厚生労働省

もう少しわかりやすい言葉で言うと、業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関して、使用者が労働者に具体的な指示をすることが困難な業務において導入することができるという事になります。対象となる業務は、次の19の業務に限定されています。

専門業務型裁量労働制 《対象業務》
  • 新商品・新技術の研究開発、または人文科学・自然科学の研究の業務
  • 情報処理システムの分析・設計の業務
  • 新聞・出版の事業における、記事の取材・編集の業務、放送番組の制作のための取材・編集の業務
  • デザイナーの業務
  • 放送番組、映画等の制作の事業における、プロデューサーまたはディレクターの業務
  • システムコンサルタントの業務
  • インテリアコーディネーターの業務
  • ゲーム用ソフトウェアの創作業務
  • 証券アナリストの業務
  • 金融工学等の知識を用いる金融商品の開発業務
  • 大学での教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
  • 弁護士の業務
  • 建築士の業務
  • 不動産鑑定士の業務
  • 弁理士の業務
  • 税理士の業務
  • 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、「事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象」として労働者が創造的な能力の発揮できる働き方として導入されました。
「企画業務型裁量労働制」厚生労働省

企画業務型裁量労働制は、大企業の経営企画室のように、経営に直結した企画部門で利用されることを想定しており、また、導入にあたっては、社内に「労使委員会」という組織を立ち上げたり、その労使委員会で裁量労働制に関する事項の「決議」を行わなければならないなど、導入や運用の手続も煩雑です。

裁量労働制を導入するメリットデメリット

企業が裁量労働制を採用することで、会社にも労働者にもさまざまな影響があります。

メリット

まずは、人件費が予測しやすいということが挙げられます。裁量労働制は、みなし労働時間の概念を用いる仕組みなので、休日や深夜に関しての割増賃金支払い義務は発生するものの、原則的に時間外労働による残業代は発生しないという前提でみなし労働時間を設定します。基本的に残業代は発生しない、みなし労働時間から人件費の総額があらかじめ算定できる点により、人件費の予測値を早い段階で算出可能です。人件費は事業運営のなかで最も重要な費用のひとつです。人件費を予測しやすい点は、会社にとって裁量労働制を導入する大きなメリットといえるでしょう。

専門業務型裁量労働制の対象業務は、どれも時間を区切っておこなうことができないものです。アイデアを生み出したり、分析や研究をしたりすることは、あらかじめ時間を決めておいたからといって、その中で成果を出せるとは限りません。労働者が自由に労働時間を決めることができれば、時には仕事をいったん離れてリラックスすることで、より良い商品やサービスを作り出すことにつながることもあるでしょう。

企画業務型裁量労働制も同様で、企画・立案・調査・分析となると、かなりの時間を要する可能性があります。また、事業の運営に影響を及ぼすものであったり、企業戦略に関するものであったりとなれば、細かいところまで検討して慎重に議論しなければなりません。裁量労働制を導入することで、労働者が時間に縛られることなく、成果を生み出すことに専念してもらえるというメリットがあります。

■ 豆知識:残業代には注意を
裁量労働制を導入したからといって、残業代が全く発生しないわけではありません。労使で取り決めをした「みなし労働時間」が法定労働時間である8時間を超える場合には、その超えた時間については時間外割増賃金が発生します。また、裁量労働制を導入していても休日に関する規定や深夜業に関する規定は適用されます。法定休日(週に1日の休日)に労働をした場合には、休日の割増賃金が発生します。所定休日(完全週休2日の会社であれば、法定休日ではない休日)に労働した場合は、週の労働時間が40時間を超えると時間外割増賃金が発生する可能性があります。深夜の割増賃金が発生するのは、夜の10時から朝の5時までの間に労働をしたときです。時間外労働と深夜労働、あるいは休日労働と深夜労働が同時におこなわれた場合には、それぞれの割増率を合算することになります。

デメリット

まずは導入にあたってかなり詳細に労使協定で取り決めをしなければならず、厳重な時間管理が必要であることが挙げられます。労働時間を労働者の裁量に任せたからといって、使用者が時間管理をしなくてもいいというわけではありません。成果を求めすぎることで長時間労働につながる恐れがあることから、労働基準監督署への届け出や報告が義務付けられます。あまりに労働時間が長かったり不規則だと、体調を崩す労働者が出てきたり、あるいは人材が定着しない可能性もあります。労働者の裁量に任せっきりにするのではなく、使用者がしっかりと健康面も含めて労働者を管理する必要があります。

裁量労働制の導入にあたって、複雑な手続きを行わなければならないのは、大きな負担と感じている企業も多いようです

まとめ


いかがでしたでしょうか?今回は、裁量労働制について解説していきました。導入すれば、会社も労働者も納得できる働き方を選択することが出来ますが、導入のハードルが高いのも事実です。企業で検討されている方は、事前に専門家である社会保険労務士(社労士)に相談しておきましょう。

(参考記事)社会保険労務士(社労士)の顧問料の相場とは?

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